のれんに使われる様々な生地の種類

繊細に染め分ける印染めの技術

暖簾にも用いられている印染めは現代では当たり前となっている印刷技術が存在しなかった時代に、
優れた技術で見事に染め分けが行われます。


その工程はまるでキャンパスのような白い生地を使用し、色を乗せたくない部分に糊を塗ってガードし、
その上から引き刷毛を用いて染料を染めていきます。

染める工程


糊の部分にお店の名前やロゴマークを描けば、その形を残して下地の白い生地が見え、
周囲は染料で染められる染め分けが行われ、後は染料が乾燥するのを待ちます。


糊の部分にもしも隙間があればそこから染料が染み込んでしまう可能性があるため、
糊が乾燥しては確認して再度塗り直すなどして完全にガードされるまで何度も繰り返します。


多くの人に見てもらう暖簾だからこそ絶対に失敗することは許されず最も気を使うシーンで、
職人の根気と技術が試されるシーンです。染料を染める際には厚すぎず薄すぎず、
丁度良い量を乗せることが大切で最終的な仕上がりに影響を与えます。


染料を乾燥させた後に水洗いを行い、先ほどの工程で塗っていた糊を洗い流し、
生地本来の白色が見えてより鮮やかな印染めが確認できます。

 


水洗いをすることで生地が多少縮むことがあり、元のサイズに整えてから
最後に余分な部分を裁断すれば暖簾の完成です。


自然と対話をする職人の息吹


平安時代に始まったとされている技法であることから、その作業に現代的な機器が
介入する余地はほとんど無く、自然と対話をしながら進行するのも特徴です。


天候や気温、湿度の影響を大きく受けることから、使用する染料や混合する水は
その日によって違い、完全に乾燥できる期間にも変化があります。


現代の印刷技術なら最短即日で納品されるケースもありますが、全てを手作業で行うだけではなく
自然との対話をしながら行うことから長い日数が必要です。

必要な日数


一般的には1日目にデザインの下絵を生地に描き、2日目に色を染めない部分に糊を乗せ、
3日目には柄になる部分を染め、4日目にいよいよ引き刷毛による染め分けが行われます。


そして5日目には水洗いと乾燥を行い、6日目には裁断と最終的なチェックをすれば完成です。
しかし、これはあくまでも全てが最短で行われた場合の目安であり、季節や天候によって日数が前後することがあります。


例えば梅雨の時期には乾燥に時間がかかってしまったり、湿度などの影響で
納得できる色が出せないと判断した場合にはその日の作業は中止すると言う
職人のプロフェッショナルな判断をすることもあります。


どこまでもこだわり抜いた伝統的な手法で染められることから、現代的な納期や日数に縛られず、
独特の温もりや風合いに価値を見出す方に選ばれています。